セブン&アイ社取締役会へ書簡送付

ダルトン・インベストメンツは、株式会社セブン&アイ・ホールディングス(3382.T)の取締役に、セブンイレブングローバルコンビニエンスストア事業の100%のタックスフリー・スピンオフの提案に関する以下の書簡を送付しました。

令和5年1月吉日

株式会社セブン&アイ・ホールディングス

取締役会 御中

私共は貴社株式の長期保有を企図する機関投資家です。長年にわたる調査、面談と議論を経て貴社ご経営陣による規律ある資本配分・事業ポートフォリオ運営への信頼を深め、一昨年に株式を所有するに至りました。直近では昨年11月に伊藤取締役ほかIRの皆様と有意義な対話をさせて頂いております。

本日は同じく貴社株主であるバリューアクトキャピタル様のご提案に関して、私共の考えをお伝えしたいと思います。私共はバリューアクト社が提案するセブンイレブングローバルコンビニエンスストア事業の100%のタックスフリー・スピンオフは貴社の企業価値向上に資する提案と考えます。以下、2つの視点からその背景をご説明いたします。

第一に、スピンオフは貴社株価のディスカウント解消に資すると考えます。私共の分析によれば、貴社グループ企業の各事業価値を積み上げれば少なくとも1株当たり8,900円の価値があると考えており、今なお貴社株価が過小評価の状況にある事は明白であると考えます。コングロマリット企業としての貴社のディスカウントの原因は「市場は複雑さを嫌う」という市場の不完全性に起因する部分も相応にありますが、加えて経営者による非効率な資本配分へ懸念を市場が株価に反映するエージェンシーコストの側面も否定できないと考えます。いずれにせよ、本件スピンオフは貴社グループ内でも最も価値の高い事業の価格を顕在化し、かつ両事業間の資本配分を完全に独立させる事でディスカウント解消に資するものと考えます。

第二に、私共が特に強調したいのは「スピンオフは対象企業の企業価値そのものの向上を促す」という本質的な効用です。スピンオフ対象企業の新経営陣は新規上場企業として高揚感と緊張感を持って経営に取り組み、自らが経営する事業にフォーカスして最適な資本配分やその他意思決定を迅速に行う事が出来ます。またスピンオフ時には経営陣が対象企業の株式保有を多く持つことが一般的ですが、これは経営陣のオーナーシップ意識と起業家精神の向上を促します。コングロマリット企業グループの一部門であった時と比べて、スピンオフ後の企業が活性化されたケースは米国でも数多く観測されています。

視点を持ち株会社「経営陣」の視点に限定すれば、スピンオフは優良事業を対価なく失う感覚がある事は理解します。潤沢なキャッシュフローを生み出す優良企業をスピンオフする事は大変勇気の要る決断です。しかし、また私共はこれまでの貴社との対話の経験や貴社の過去の数々のご決断の実績から、難しい案件にも正しい決断を行っていただける取締役会だと信頼・期待しております。

最後に、過去10年にわたる日本のコーポレートガバナンスの進歩は目覚ましいものの、日本の上場企業全体を俯瞰してみれば資本効率の改善はいまだ不十分なレベルにとどまっています。潤沢な資本は日本の強みですが、その利回りが低水準であり続けていることは日本社会にとって大いなる機会損失であり続けています。貴社をはじめとしたリーダー企業の果断なアクションがロールモデルとなり、状況の打開につながる事を日本市場に長年コミットし続けてきた株式投資家として期待しております。貴社のスピンオフは日本株式市場の歴史の中でも象徴的な案件となり、後に続く企業の勇気ある決断へと連鎖していくでしょう。

私共が口をはさむまでもなく、真摯な検討が行われている過程と拝察しますが、一株主としてご決断を応援出来ればと考えレターを差し上げました。ご不明な点がありましたら何なりと私共の東京オフィスメンバーにお問い合わせください。

James B. Rosenwald III

Co-Founder and Co-Managing Member

Dalton Investments LLC

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