ポートフォリオ企業の経営陣と取締役に対し、コーポレート・ガバナンス改善への必須事項確認の為のフォローアップ・レターを送付

ダルトン・インベストメンツは、投資先企業の経営陣と取締役に対し、弊社が投資先企業のコーポレート・ガバナンスにおいて期待する3つの事項((1)適切な資本配分、(2)取締役会・経営陣と株主の利益共有強化、(3)多様性と独立性の高い取締役会)に関して、継続的な対話を実施していく上で以下のレターを送付しました。 当レターは、コーポレート・ガバナンス改善に関するエンゲージメント・キャンペーンの一環として昨年12月に送付したレターのフォローアップとなります。https://www.daltoninvestments.com/dalton-issues-letter-to-management-and-directors-of-our-portfolio-companies/

親愛なる投資先の経営者様、取締役の皆様、IRご担当者様

平素よりお世話になっております。昨年12月に私共は全ての投資先の皆様に「適切な資本配分」「利益共有の強化」「取締役会の独立性と多様性」という3つのご提案についてのレターをお送りいたしました(https://www.daltoninvestments.com/dalton-issues-letter-to-management-and-directors-of-our-portfolio-companies/ )。 以降、本年の株主総会シーズンに至るまでの約半年間にわたり、多くの皆様と度重なる対話の機会を頂きました。東京オフィスのメンバーを中心に、投資先の皆様より頂いた対話の回数はのべ90回を超えました。皆様から惜しみない対話のお時間を頂きましたこと、改めて御礼申し上げます。

株主総会における議案提案の可能性を示唆する内容であったため、時には緊迫感を伴う場面も有りましたが、提案内容の主旨についてはほぼすべての皆様からご理解・賛同頂き、生産的な対話をさせて頂いたと自負しております。また、昨年末時点で私共のご提案内容をすでにクリアされている会社様とはより発展的な対話もさせて頂き、私共が学ばせて頂くことも多々ありました。結果、多くの会社様から下記の事例を含む具体的なアクションを伴うご回答を頂くことができました。

  • 資本配分=資本政策方針の策定(例:100%還元性向)、ROICを含むKPI及びその目標値設定、自社株買い・増配の実施
  • 利益共有=株式保有ガイドラインの新規導入と開示、株式報酬制度の実施額増加
  • 取締役会=多様性・独立性の向上、女性や投資家・アナリストとして高い経験とスキルを持つ人材の登用

結論を申し上げれば、私共との対話の期間において、ご提案差し上げた先の半数以上の皆様から上記のいずれか、または複数の施策を実施頂きました。結果として、私共が当初お送りした株主提案の過半数は、日の目を見ることなく撤回させて頂く事ができました。この結果に誇りを持っております。

無論、上記には私共の提案の有無にかかわらず皆様が実施されていたであろう施策も含まれます。最終的なアクションは株主提案の承認ではなく、全て取締役会の自主的な機関決定によるものです。もとより私共は株主提案を、あくまで取締役会におけるご検討とアクションを促す触媒と考えております。結果として生まれたコーポレートアクションを通じたガバナンス・資本配分の改善(ひいては企業価値向上)は、経営者の皆様のご尽力の賜物です。

株主総会シーズンが終わり、新体制の下、皆様が更なるガバナンス・資本配分の改善に向けた取り組みを速やかに再開される事を期待しております。今回対話の中で、皆様と私共で経営課題・ゴールの認識は一致しながら、実務的観点から本年の株主総会までには実現ができない合理的な事情があった事例も多く(その様な場合を認めた場合も株主提案を撤回しております)、積み残しの課題も少なからずあるものと認識しております。

以下に、皆様の更なるご検討に資することを期待し、改めて私共が期待する1年後の皆様の姿をお伝えします。

適切な資本配分:

私共は投資先の皆様が資本政策として「適切な財務資産の水準(または資本構成)」、「向こう3~5年間の具体的な資本配分計画」、「ROIC、ROEを含むKPIとその目標値(KGI)」「政策保有株の縮減目標」を定量的に開示・コミットいただく事を期待します。経済・事業環境や将来の投資機会の不確実性を理由に、資本配分政策の定量化・開示に躊躇される会社は少なくありません。しかし私共は不確実性を理由に資本政策を放棄してはならないと考えます。あらゆる経営の意志決定は多くの不確実性の下で行われるか、あるいは一生できないかのいずれかです。資本政策を見直す上で、事業リスクを踏まえ、適正キャッシュはいくらかと常に自問自答することが、上場を維持するマネジメントの宿命だと考えます。勿論、計画策定後に重大な事象が発生すれば、計画を適宜修正頂く事は全く問題ございません。

なお、上記資本配分を行う前提として、自社株式の正当な評価額について取締役会としての見解を持つことも必須と考えます。今春の東京証券取引所から上場企業への要請にも、「市場評価に関して取締役会で現状を分析・評価」と言及されていますが、加えて私共は、皆様の投資の意思決定が常に自社株買いという代替機会との比較の上、企業価値向上の観点から判断される事を期待します。

取締役会・経営陣と株主の利益共有強化:

私共は株式保有ガイドラインを通じて、具体的な利益共有改善の道筋を投資先の皆様がご自身で制定・開示(コミット)することを期待します。ご存じの通り、私共は日本的な慣習にとらわれることなく、取締役の皆様が固定報酬の3-5倍の株式を保有する状況を合理的な時間軸で築くことをお勧めしています。私共が期待する株式保有の水準は、会社様から既存の報酬制度に照らしてハードルが高すぎる、あるいは従業員との軋轢を懸念する声を頂くのも事実です。しかし、譲渡制限株式報酬・ストックオプション・持ち株会・株式交付信託等、複数のプログラムを組み合わせることで役職員のオーナーシップを欧米企業に引けを取らない水準まで高め、結果役職員の意識変化の実感をお持ち頂いている事例もございます。私共も常にお力になりたいと考えておりますので、ご関心あればお問い合わせください。

多様性と独立性の高い取締役会:

私共は引きつづき、少なくとも取締役会の半数以上を独立社外取締役で構成して頂く事、同時に多様性(女性や投資家・アナリストの経験者を含む)を高めていただく事を期待しております。今回私共の提案に対して「形式のために実効性を犠牲にしたくない」「当社の取締役会の実効性は既に高い」というご意見を頂きました。しかし、私共は独立社外取締役が過半を占めながらも極めて実効性の高い取締役会の事例をいくつも存じ上げており、実効性と独立性(多様性)は克服不可能なトレードオフではないと信じております。確かに形式面での水準を高めていく過程では一定の摩擦も起こり得ます。しかし、先進国の上場企業にとって、これらは遅かれ早かれ乗り越えるべき課題であり、形式と実効性両方を備えてこそ真にレジリエンスのある取締役会と考えます。適切な候補者探し・検討が容易でない事も理解しておりますので、なおさら長期的な目標の下、持続的な取り組みをお願いいたします。

以上のご提案は、過去半年間の進捗をふまえれば、もはや無理難題ではなく、1年後には全ての投資先の皆様がこの水準をクリアすることは十分可能と確信しております。私共は引き続き、皆様の取り組みを後押しする形で株主としての役割を果たしていきたいと考えています。今後1年間の皆様との対話がより実りあるものとなり、2024年の私共の株主提案がゼロになることを我々自身が誰より願っております。

免 責 事 項

本資料は情報提供のみを目的としたものであり、特定の金融商品への投資の勧誘や売買、あるいはその売買の適合性についての助言を行うことを目的としたものではありません。

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